地 学 雑 記(6)
粘土質資源とのかかわり(その二)
本 多 朔 郎※
ゼオライト学会の動向

 ゼオライトに天然と合成の両者があり、しかもほぼ同時期に産業として誕生したことは前章で述べた。この両者の相互関係はゼオライトの国際学界でのこれまでの動向を繙くことが非常に参考になろう。

 1950年代に産声を上げた合成ゼオライト工業は急速に拡大の一路をたどり1967年には第1回国際ゼオライト会議(IZC,International Zeolite Conference)を英国ロンドンで開催するに至った。本会議は天然、合成の別はなかったがわが国からの参加については定かでないらしい。第2回は3年後米国ウースタ市であり、これには日本から数名が参加した。会議はその後もほぼ3年毎に順調に開かれ1986年には第7回会議が日本で開催された。わが国ではこの会議にそなえ1984年にゼオライト研究会(JAZ,Japan Association of Zeolite)を設置し、国内の天然•合成両方のゼオライト研究者からなる組織をつくり、第7回会議を成功裡に終了した。JAZからは機関誌「ゼオライト」が年4回発行され天然•合成両ゼオライトの情報誌として貴重な役割を果たしている。

 IZCは回を重ねるごとに参加者が増え盛況を呈したが、会の主流が合成ゼオライト研究者で占められてきたので、天然ゼオライト研究者間に不満が出はじめ、1976年には米国のDr.Mumptonを中心に別個の会議として「ゼオライト'76」が米国ツーソン市でもたれることになった。この会議には合成ゼオライトの研究者も多数参加し非常に盛会だったがここでIZCとの関係の調整が問題になり、合成ゼオライト側は国際ゼオライト協会「IZA,International Zeolite Association」を、天然ゼオライト側は天然ゼオライト国際委員会「ICNZ,In­ternational Committeon Natural Zeolite」をそれぞれ設立した。そしてIZC運営の主体はIZAと決めた。さらに1980年のナポリでの第5回IZC会議以降は両者の内容を共に活かす合同会議にすることを改めて確認し合った。IZC、ICNZともにその後確実に回を重ねており、前者は1994年にドイツで第10回会議を、後者は1993年に米国で「ゼオライト'93」を開催した。

 しかし、IZCやJAZの会議での天然ゼオライト研究者の参加数や研究発表件数は合成ゼオライトに比べると極端に少なくマイノリティの感は拭いえない。


※秋田大学名誉教授  財団法人秋田大学高山学部鉱業博物館講演会幹事
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